『超VIP』キャロライン・ケネディー リムジンのお客さん 岩崎文修

管理人の三分間メモ
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    リムジンのお客さん
    キャロライン・ケネディー

    現在はいろいろな仕事をしている。
    リムジンサービスはそのうちのひとつでもある。
    リムジンの仕事は自分のお客さんへのサービスの時間以外は地元米系大手リモ会社の仕事も積極的に請け負うことにしている。
    12月のある日曜日、午後の1時からコンスタントに仕事をこなし午後の9時にカナダ、モントリオールからのお客さんを ラガーディア空港でピックアップしマンハッタンに送った。モントリオールといえばケベック
    州、ケベック州といえばフランス語圏、久々のフランス語を話すお客さんだった。 ここのところフランス語のご無沙汰が続き会話は米仏語ちゃんぽんになってしまった。 その人の話では「マンハッタンにはフランス語が溢れている」ということであったが・・・ 
    言葉は毎日使わないとすぐ忘れてしまう。 しかし、20数年間(30年?)も日本語を話さなかった横井正一(軍曹?) さんはそれでも日本語を忘れなかった。 彼の場合、日本語も話さなかったろうが他の言葉も話さなかったので日本語が そのまま残ったものと思える。日本語を話さず他の言葉をずっと話し続けると日本語を段々と忘れてしまうと思う。


    さて、お客さんをマンハッタンに送って時間は夜10時ちょっと前になった。
    今日の仕事はこのくらいにしたい気分だな・・・と思いデスパッチャーに連絡
    (以下 I:私、D:デスパッチャー)
    I:「今日はこれで終わりだろう。家に帰って良いか?」
    D:「ちょっと待ってくれ」
    I:「・・・・」 何だよ、まだあるのか?と独り言
    D:「00:30AMにプライベートジェットのお客さんがあるからそれをやってくれ」
    I:「00:30?誰か他の人間はいないのか?」
    D:「今から詳細を送るから見てからすぐOKしてくれ」

    詳細が送られてきた
    「なになに? VIPだあ?  又かよ? やりたくないなあ・・・。」 (回数を多く乗る客は皆VIPなのである。人間はふつ〜の人間でも)
    「何だって? 『超VIP』?」 
    「尚更やりたくないなあ・・・」

    普通の場合、VIPは泊まるホテルも一流、使う金も一流、それがVIPという認識があるが、リモの場合は違う。
    VIPでも一般客でも料金は同じ。
    これではVIPと一般客の区別をつけるわけにはいかない。
    もしも、VIPが2倍の料金でも払うのであればそれに見合った運転(緊張した運転)になりストレスも多くなるからバランスが取れる。
    しかし、VIPの場合は料金が同じでストレスだけは一般客よりも多くなる。 
    だから、私としてはVIPは余りやりたくないのである。まあ、料金に見合ったサービス、これはホテルも、 飛行機の座席も同じだが、リモの場合はストレッチリモ等に乗る場合はそれでも良い(料金が2倍以上になるから)が、 セダン型のリモの場合はVIPでも料金は一般客と同じなのである。 
    運転手のストレスは計算に入らない。
    これが不満の種になるのは同僚の他の運転手も同じことを考えて日々仕事をしている。

    I:「超VIPなら俺なんかよりももっと経験のある10年、20年選手がいるだろう?彼らにさせろよ!」
    私のリモ経験はまだ数年そこそこで、同僚の中には20年もリモの運転手で飯を食っているものがいるのである。(よくぞ生きてきたと感心)
    D:「フランク(私の名)、あんたに頼みたいんだよ。なあ、OKしてくれよ!」
    I:「・・・・・・」(しばらく無言)

    デスパッチャーの話し方で分かる。(他に適任者がいないのだ)
    簡単に断ると次の日から安い仕事ばかりを当てがわれることもある。お互い持ちつ持たれつなのだ。

    I:「仕方がない。じゃあ、こうしよう! もしも他の運転手がいたらすぐにそれにさせるとして俺は抜ける。」
    とは言ったもののデスパッチが積極的に他の運転手を探すはずは無いのは前の会話で分かっている。
    会社が私を評価しているのは知っているが、それとやりたい仕事(一般客の送迎)とあまり気が進まない仕事(VIPの送迎)とは話が別である。

    10月だったか、「全米で2位か3位の大金持ち(ラスベガスのカジノのオーナーで個人資産3兆円)」の送迎があった。
    「三兆円?何かの間違いだろ?」
    「30億円か300億円の間違いだろ?」(それでも驚く数字に変わりは無いが)とブラックベリーで見ている Wikipidiaの数字を何度も計算しなおしたが、間違いではなかった。
    個人資産第1位は言うまでも無くダントツのビル・ゲーツ(5兆円)である。
    その時も「フランク頼みがあるストレッチリモ(胴長のリモ)を運転してくれ」と頼まれたが、「ストレッチリモだけは運転しない」 と拒否した。
    アメリカ大陸横断もできる53フィート(15m)の超大型トラックの運転免許を持っているが、 「中途半端(7m)なストレッチリモは運転したくない」と言うのが私の言い訳である。
    「じゃあバンでいいから運転してくれ」ということで私もその送迎に狩り出された。
    私がストレッチリモの運転を断ったためその大金持ちは同僚の運転するストレッチに乗り、私の車(バン)は荷物を運ぶことになった。
    8人の乗客で荷物はスーツケースが10個、ガーメントバッグ(スーツ、ドレスを入れる専用のバッグ)が更に10個という大荷物であった。
    正真正銘のVIPだろう。荷物を運んだだけの私に$50のチップをくれた。それも本人ではなく取り巻きのひとりが。
    言うまでもないことだが、このようなお客さんはプライベートジェットでテタボロ空港に到着する。
    VIPとなると決まって「フランク、頼む!」といわれてしまう。基本的にVIPはやりたくないのだが・・・。

    話を戻そう・・・
    会社からの詳細欄には「超VIP」と書いてあった。
    「又、VIPか・・・?」
    「超VIP」だと? 
    「どこの誰だ? 」 
    「相手の会社は?」
    「なになに、ケネディー・センター?」 
    「こんな名前聞いたことがないな・・・」
    アメリカに住んでいるとケネディーという名前が結構多いのに気が付く。
    (左:ジョンJr.右:キャロライン)

    ずっと前にはジョージ・ケネディーという俳優もいた。
    数は多くはないがたまに見かける名前でもある。 
    ある時、ケネディーという名前のお客さんを載せたこともあったのでそのお客さんに聞いた。
    私:「ケネディー大統領と関係のある人ですか?」
    相手:「まったく関係ありません。残念ながら・・・」
    私:「やっぱりね」(独り言)
    ケネディーと聞いても別に驚く名前ではないのである。

    会社名など知らんが、「誰だ一体?」 とお客さんの名前を見る。
    「Caroline Kennedy? どっかで聞いたことあるような名前だな、これ。」
    「もしかして、あのキャロラインか? どうせ、同姓同名だろう?」

    テタボロ空港に00:30AM着予定の自家用ジェット機は結局2時間も遅れて02:15AMに到着した。
    「これだもんな、自家用ジェット機の人は勝手気ままに飛ぶから待つほうはたまったものじゃないよ」、と思いながら待つ。
    10時前に前の仕事が終わり、今はもう午前2時、すでに4時間も待っている。

    午前2時を過ぎること15分、やっと到着した。
    空港のアナウンス:「機体番号 N・・・CS を待っている運転手はターミナル前に来て待ってください」
    「やれやれ、やっと到着か・・・」
    私を含めて4台のリムジンがいっせいにターミナル前に整列した。
    キャロライン・ケネディーが4人いるはずはないので4台の車は「ケネディー御一行様」用であり、キャロラインが1台、他の御一行の人たちが3台の車に分散して乗ることになる。

    自家用ジェット機で7-8人の乗客が乗っていた。

    どやどやと出てきた乗客たちが自分の車を探す。
    初老の紳士が聞いた。
    「キャロラインの車はどれ?」
    私:「それはここです」
    その紳士とキャロラインが私の車に乗り込んだ。
    私の車に乗ったのはご一行様の取り巻きの人間ではなくキャロラインだった。

    キャロライン・ケネーディとはまさしく『超VIP』のケネディー大統領の娘さんその人である。
    一路、アッパーイーストのパークアベニューの住所に向って発進・・・
    初老の紳士とキャロラインは車中でなにかシリアスな話をしていたのでキャロラインさんとはほとんど会話ができなかった。(残念)
    初老のその紳士は後で分かったことだがキャロラインの旦那さんであった。
    自宅に着いて降りるときにキャロラインが言った。
    キャロライン:「フランクどうも有難う。これ(チップ)、取っておいて・・・」

    ※注:リムジンサービスはほとんどの場合チップは既に料金に含まれているのだが、 それを知っていても「更にチップをくれる」お客さんがいる。
    基本的に車代は会社払い(この場合はケネディーセンター)だからお客さんはポケットマネーを使う必要は無いが、 それでもポケットマネーでチップをくれるお客さんがいる。
    ※注:普通、エキストラのチップをくれる人の相場は$20.00札が1枚。というのが一般的。$10.00x2ではなく、$20.00x1である。
    ※注:私の経験では$20.00x1をくれる人が70%、$10.00x1が20%、$5.00x1が9%、その他が1%

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